ドアをノックするのは誰だ?
これまで、僕たちの想いはどうであれ、数々の傑作や、名作や、駄作や、快作や、怪作や、魔作盗作破作の創作たちがアニメ化、映画化、ドラマ化の帯をつけられ本屋に平積みにされてきました。僕たちは長い歴史の中で、有名俳優と有名作品を組み合わせて売れば内容がどうであれそれなりの収入になることを学んできたのです。
もちろん、全ての創作物がそうであるように、玉石混交、名作もあれば迷作もあるし、迷作にすらなれなかった作品もある。
それでも、全ての創作物がそうであるように、これからもそういった作品は創られ、売られ、忘れられていくのでしょう。
凄い時代だ。
僕はこの世界全ての創作物がアニメ化して映画化してドラマ化してほしいと思ってる。カップルのセックスの前戯に使ってくれて全然おっけー!!俳優や声優の宣伝に使ってくれて全然おっけー!!ていうか、足りない!もっとこい、ずる賢い大人!!こっちの鉱山にはまだまだ豊富な資源があるよ!!
でも、純真無垢な処女厨たちは、自分たちの大好きな作品がセックスの前戯に、広告に使われるのを嫌う。当然だと思う。僕も処女厨の端くれだ。その気持ちは痛いほどわかる。僕たちの青春をぶち壊したあの作品や、子どものころ宝物だったあの作品が、無作為に、無造作に扱われるのは我慢ならない。僕たちに同情して、そんなに好きじゃないけど、原作は読んでないアニメしか観てないけど、そもそもそんな作品知らないけど、ふざけるなと、心優しいインターネットの民も一緒になって不平不満を言ってくれると、安心する。今までどこに隠れてたんだってくらいの数の人々がまだ公開もされていない作品を駄作になる、失敗する、と決めつける勇気を持ったインターネットの波のなかに僕もいることに安心するし、その波の一員であることに誇りすらある。人々は一つになれるし、世界は平和になれるんだと感じるし、信じられる。
それでも、僕は全ての創作物にはアニメ化して映画化してドラマ化してほしいと思う。
まるで、ドアをノックするように
コンコン。
……ダメか。
コンコン。
……誰か。
コンコン。
……頼む。
コンコン。
……。
ガチャッ。
……はい。
ノックを続ければ、いつかは創作の女神がドアの向こうから、顔を覗かせることだって、あるから。
僕はもっとたくさんの、面白い物語が観たい。
原作の良さを最大限引き出す、お手本のような物語を観たい。
大胆なリメイクや、大幅な原作改変によって、まったく違う輝きを放つ物語を観たい。
それだけなんだ。
そのためには、上にいる人たちの姿勢はどうであれ、まずは創られる環境がないといけない。僕は、そういった環境がある程度は整っているこの時代に生きられることを嬉しく思うのだ。
もちろん、上手くいくことなんて稀だ。ほとんどの作品は石にもなれずに大きな川に放り込まれて、なすすべもなく底に沈んでいくだろう。
でも、ノックをする。
ノックをする腕を止めない。
だって、きっと、ノックを続ければ、いつかは……。
まあ、僕は鏡家サーガがアニメ化したらインターネット辞めますけどね。
砕けろ資本主義。