いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

さようなら、

さようならこんにちははじめましてよろしくお願いします。いとうくんです。いとうくんだよ。サトノクラウンじゃない。辞めたよ。辞めた、サトノクラウンの魂を、僕はもう食べない。

僕はサトノクラウンじゃない。

悲しいけれど。寂しいけれど。悔しいけれど。

辞めることにしたんだ。走ってもないくせに走ってるフリをするのは。そんなの、サトノクラウンにとってみればただのお荷物でしかないし、サトノクラウンがどれだけ頑張ったところで、僕自身がどこかへ運ばれていくわけでもない。

誰の得にもならないんだ、こんなことは。

そもそも、当たり前の、ひどく当たり前のことを言わせてもらえれば、人は馬にはなれない。事実として、たんなる現実として。

魂の形が違うし、肉体の寿命も違う。

それを、僕は、無理矢理押さえつけて、いや、違うな。僕は関係ない。本当はずっと関係なかった。僕とサトノクラウンの間にはなんの関係もなかった。サトノクラウンの魂を食べていた?思い上がりも甚だしい。僕の文章は自己憐憫が過ぎてたまに気持ちが悪い。

それでも、思い上がりを自覚したうえで、だけど、僕の思念が、私怨が、愛が、祈りが、サトノクラウンの走りを邪魔しているような気がして仕方がないんだ。

僕はサトノクラウンに頑張ってほしい。本当に。馬の一生は短い。途方もなく、それは一瞬で過ぎ去っていく。その一瞬の煌めきを、僕の、人間の矮小なエゴで、台無しにしてほしくない。

僕はサトノクラウンの魂を、食べないし、食べてなかったし、これからも食べない。

もう手遅れかもしれない。彼に残された時間がどれだけのものなのか、僕にはまったくわからない。だけど、でも、全てはこれから起こる、まったく未知の、わからないんだ、世界は。

奇跡は起こらなかった。

ひとりの人間がいて、その人間が好きな馬にお金を賭けて、馬も人も負けてしまった、それだけのことだ。

どこにでもある、何度だって繰り返されてきた、平凡な人間の、平凡な日常。

それだけ。

だから僕は来週も競馬をする。楽しいから、当たると嬉しいし、外れたら悔しいから。人間だから。

誰かの楽しいという気持ちや、嬉しいという気持ちや、悔しいという気持ちを嫌悪し、呪詛してきた日々は、終わった。

今日僕は変化していくlifeを選んだ。

これからは、当たり前の感情を、当たり前に消費していくよ。

おわり。