いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

ゴールデンウィーク備忘録④

26日目

 滅入る。本当に滅入る。今日で終わるはずのゴールデンウィークが続いていることに気づく。日付がゴールデンウィーク初日に巻き戻っているのだ。

 そんな、こういう非日常的な展開はうまく避けてきたはずなのに……。ゴールデンウィークが始まって、本当はどれくらいの時間が経ったんだろう。困った。

 チャイムが鳴る。宅配業者だった。『生活考察vol.6』と『コミティア30thクロニクル』の1巻が届く。僕は『生活考察vol.6』は海猫沢めろん先生の文章に、『コミティア30thクロニクル』の1巻はTAGROの漫画に感動することを知っている……。から、読まない。本当は読んだほうがいいのかもしれないけど、僕は怖かった。その本を一度読んだってことをきちんと確認するのが怖い。

 かわりに本屋へ行き、『さよなら恋人、またきて友だち〜宮内ユキについて〜』を買って読む。相変わらずおもしろい。自然に物語の焦点を横滑りさせてく手法もうまい。しかし、オメガバースの世界、奥が深い……。他の作品も読んでみなくちゃ。

 夜ははやめに眠る。とにかく誰とも会いたくはなかった。

 

27日目

 滅入る。ゴールデンウィーク、終わらず。『コミティア30thクロニクル』の2巻と3巻がないことに気づく。もしやと思い、荻窪ゆうパックセンターに行くと荷物として届いたいた。受け取る。読み返すことはしない。今日という日に、繰り返す前の僕はどんな行動をとっていたのかが思い出せなかった。ただとにかく身体を動かしていたくて、井の頭公園まで郵便物を持ったまま歩く。休日の井の頭公園はやはりというか、人で溢れかえっていた。

 夜、誰かと喋っていないと不安になりそうで高円寺へ。誰もゴールデンウィークが繰り返していることに気づいている様子はない。

 

28日目

 滅入る。ゴールデンウィークは続いている。

 布団のなかで頭を抱えていると、サトノクラウンが家にやってくる。心底参った様子の僕に、サトノクラウンは静かに語りかけた。

 サトノクラウンいわく、この繰り返しはヒプノシスマイクによって引き起こされているらしい。原理や動機などは不明。そもそも、ヒプノシスマイクにその自覚があるのかどうかすら不明。

「ただ、俺は馬だからヒプノシスマイクに語りかけることもできなければ、この現象を解決することもできない。それは人間である君がやってくれ、頼む」とサトノクラウンは云った。

 肝心のところを丸投げするな、と怒ってやりたかったが、サトノクラウンは馬だからこれ以上を期待するのは酷というものだ。僕は黙ってうなずいた。

 サトノクラウンが帰ってからも、しばらく僕は布団にくるまって頭を抱えていた。

 

29日目

 滅入る。ゴールデンウィークは当たり前のように続く。

 一晩考えた結果、何より優先すべきはヒプノシスマイクとの対話であるという結論に至った。ヒプノシスマイクと語り合うことで、自覚の有無はともかく、この繰り返しの原因となっている事柄について、しっぽくらいは掴むことができるのではないか、と、そう考えた。が、しかし、問題はどうやってヒプノシスマイクと対話を行うかで、僕はヒプノシスマイクから着信拒否されている上に、ラインもブロックされている。どこに住んでいるのかも知らないし、他に共通の友人がいるわけでもない。連絡の取りようがないのだ。

 仕方ないので、向こうからの連絡を待つことに。ここ数日、ちょくちょく向こうから着信があるにはあるのだ。内容は一言、ごめん、という簡潔なものだが。 

 しかし、いくら待っても着信が来る気配、なし。

 『虚構推理』の漫画①②を読む。僕は原作小説未読勢だが、なんとなく話の筋は知っているつもりなので漫画版がなかなか本題に入らなくてもどかしい。調べたら今10巻まで出ているので、一気に買ってしまうか、それとも原作を読むか……。原作小説は探せば家のどこかにあるはず……。でも、ヒロインの琴子ちゃんがモロタイプなんだよなー。うーん、悩む。

 

30日目 

 滅入る。ゴールデンウィークは続く。

 結局、ヒプノシスマイクから連絡はない。夕方、ハハノシキュウのライブを見に下北沢へ。開場まで時間があったのでヴィレッジヴァンガードで時間を潰していたらハハノシキュウ入店。びっくりして隠れる。チェキを撮るカメラを買っていた。あとでチェキ会のために購入したものだとわかる。ライブは緊張で始終お腹が痛かった。

 

31日目

 滅入る。身体がカサカサに乾いている。もちろん、ゴールデンウィークは終わっていない。

 何度かヒプノシスマイクに電話入れるが、着信拒否。ラインも一向に既読がつかない。

 そもそも僕とヒプノシスマイクの関係がこうなってしまったのは、僕がネットでヒプノシスマイクの悪口を云ったとか、それをヒプノシスマイクが無視したとか、他愛のないことが発端で、まあ数日くらいお互い連絡がつかなくても問題はないかとたかをくくっていたが、まさかこういう形で悪影響を及ぼしすとは……。

 僕だってきちんと謝りたいのは山々なのに、それすら叶わず、一方向こうは気分次第でいつでもごめんと云える状況……。考えているとムシャクシャしてくる。ふざけるな。お前のそういうところが大嫌いなんだよ、僕は。

 夜、高円寺に呑みに行く。駅前でぐでんぐでんになって寝た。朝になってヒプノシスマイクから着信があったことを知る。

 

32日目

 滅入る。路上で寝たせいで完全に風邪を引いてしまった。しばらくゴールデンウィークは終わりそうにないし、静養させてもらうことにする。

 

33日目

 滅入る。少しだけ熱が下がってきた。ファミマでポカリとおかゆを買う以外は外食せず。ひまなので『コミティア30thクロニクル』をパラパラとめくる。いつの間にか寝てる。

 

34日目

 滅入る。熱は下がったが、まだけだるさがある。ヒプノシスマイクからの連絡はない。そういえば、本来ならそろそろ大阪に行っていなくてはいけなかったはずだ。うーん。でもまあ、風邪なら仕方ない。

 午後、身体も軽くなったので中野のほうまで出向く。急に読みたくなってブロードウェイで『ヒカルの碁』全巻購入。家で読む。脇役まで含めてここまでキャラを活かしきる/生かしきる漫画はそうそうないと思う。すごい。何度読んでも感服。

 

35日目

 滅入る。滅入ることにも滅入りはじめる。ヒプノシスマイクから連絡はなし。いろいろ事務的な手続きを済ませるが、これにどれだけの意味があるのか……。キッチンを掃除してみる。

 

36日目

 滅入る。終わらない。『知性は死なない - 平成の鬱をこえて - 』を読む。あれ、僕、この本読んだことあるっけ?

 誰か答えてほしかった。

 

37日目

 滅入る。終わらない。

 買った覚えのない山本直樹『YOUNG&FINE』が家にある。もう、何が本当に起きたことで、何が起きなかったことなのかすらよくわかなくなる。本を開くとたしかに読んだことのある内容だった。

 

38日目

 滅入る。

 嶽本野ばら『遺言 a Will』を読む。これは初めて読む感じがする。そのことが嬉しくて本の内容がよく入ってこなかった。

 

39日目

 滅入る。今日は荻窪ゆうパックセンターに『コミティア30thクロニクル』2巻と3巻を取りに行く日だった気がする。いや、それは昨日か?荻窪ゆうパックセンターに行ってみると、案の定『コミティア30thクロニクル』が届いている。家にあったはずの『コミティア30thクロニクル』2巻と3巻はいつの間にかなくなっていた。頭がいたい。

 

40日目

 滅入る。夕方、下北沢に。開場までまだ時間があったのでヴィレッジヴァンガードに行く。ふと思い立って、チェキを撮るカメラの陳列をいじってみる。一番目の前にあるカメラを一番うしろに。それからハハノシキュウ入店。想定通り、一番前にあるカメラを買っていった。

 その日、サイン会兼撮影会ではカメラのフラッシュが急に点かなくなり、なぜかカメラマンをしていた佐藤先生と一緒に来ていた編集者の人とシキュウさんがあの手この手で明かりを集めるというアクシデントが発生するはずなのだ。そのため、チェキの枚数が足りなくなり、僕はチェキは辞退してアイフォンのカメラで写真を撮ってもらうはずなのだ。

 しかしライブ後、カメラのフラッシュが壊れるようなアクシデントはなく順調に撮影会は行われた。僕も三人でチェキを撮ってもらった。2つのサインが描かれたチェキを手に会場をあとに。僕は思った。案外、未来は俺等の手の中にすでにあるのかもしれない、と。

 そしてその晩、ヒプノシスマイクから電話がかかってくる。

 

つづく