いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

いとうくんの再生日記〜沖縄編〜8日目?

 天国2日目。
 死、ポン。
 パチリ。
 僕は駅前ビルの喫茶店でモーニングセットを注文していた。
 喫茶店に入ってきたおばちゃんの声が大きかったので、削除。おばちゃんがドロップした飴を店員に拾わせ、こちらに持ってこさせる。黒糖飴だったので捨てた。
 運ばれてきたコーヒーに口をつけ、一息つく。
 僕はここでの生活にすっかり適応していた。
 というか、諦めていた。
 何度も繰り返すように、僕はもう、疲れちゃったのだ。
 疲れちゃって、もういいかなって気分だった。
 モーニングを食べ終え、お会計もせず喫茶店を出る。
 誰も何も云ってこない。
 なぜなら、ここは天国だから。
 まだ時間があったので、グランフロントや阪急のあたりをぶらぶらする。ヨドバシカメラがいつの間にか拡張されていた。
 お昼はお茶漬けを食べた。体に優しい味がしたが、少し物足りなかった。隣に座っている女の人が、だし汁をおかわりしたいらしくキョロキョロしていたが、残念ながらここには店員さんは一人もいなかった。彼女はそこで店員さんが現れるのを待っている間に寿命を迎えて、死んだ。
 さて、食欲を満たした僕は、まんがタイムきらら展in大阪へ向かうことにした。
 大阪港駅前で、パンダがジンベエザメに襲われていた。可哀想だと思ったが、とくに助けはしなかった。パンダはジンベエザメに食べられ、死んだ。
 まんがタイムきらら展には、フォロワーが二人と、二人と同じ会社の人が一人いた。その他に全身がまんがタイムきららの人が二人いたが、怖かったので近寄れなかった。
 僕たちは四人でまんがタイムきらら展に突入した。
 まんがタイムきらら展は充実の内容だった。というか、予想以上に展示が多かった。なんだこれは、と思った。膨大な情報量にくらくらした。そんななか、運良く後藤ひとりさんのライブを見ることができた。後藤ひとりさんがソロで何曲か演奏をした後に、結束バンドのメンバーが出てきて、最後にみんなで一曲演奏した。僕は感動した。涙が止まらなかった。ここは天国か!?と思った。そして実際にここは天国だった。
 物販では、後藤ひとりさんグッズが全て完売していて、何も手に入れることが出来なかった。缶バッジガチャをすると、はやすぎてもうここにはいないはずの平沢唯さんが当たった。結構うれしかった。
 まんがタイムきらら展を後にした僕とフォロワーの二人で、梅田の沖縄へ向かった。同じ会社の人は帰ってしまったので少し悲しかった。
 梅田の沖縄は、沖縄の沖縄以上に賑やかだった。僕たちはステージ最前列の席に通され、オリオンビール泡盛やなんだかそういうものを飲みながら、海ぶどうや、海ぶどうや、海ぶどう、あとは海ぶどうなどを食べた。他に何を食べたのかは覚えてない。
 10皿目の海ぶどうが運ばれたあたりで、森博嗣みたいな名前のミュージシャンが出てきて、ステージでライブをはじめた。何曲か演奏したあと、今日結婚式だった人と今日誕生日だった人をステージ上にあげた。今日結婚式だった人と今日誕生日だった人はどちらも自分が今日の主役です、という顔でステージに立った。僕は彼らが少しだけ可哀想になった。彼らはステージ上で下手くそなフリースタイルバトルをやらされた挙句、ちんけな商品(Amazonギフト券)のために腕相撲をやらされていた。これじゃただの晒し者じゃないか、と僕は森博嗣みたいな名前のミュージシャンに怒りを覚えた。死ね、と念じた瞬間、森博嗣みたいな名前のミュージシャンは血を吹いて倒れた。いつの間にかみんなが立ち上がって、テーブルの周りをぐるぐるぐるぐるぐるぐるまわりながら踊っていた。誰かが、殺せ!と叫んだ瞬間、今日誕生日だった人が今日結婚式だった人を殴って倒した。今日結婚式だった人は悲鳴をあげながら、今日誕生日だった人に飛びかかった。あとはめちゃくちゃだった。僕たちは殴り、殴られ、ボロボロになりながら梅田の沖縄をあとにした。
 梅田の沖縄の外で、フォロワーの一人が明日島根に行くらしいのでお別れすることになった。

 僕たちは二人になった。
 僕たちは血塗れになりながらサイゼリヤに入った。ワインをボトルで、それとピザと、あと、なんだっけ……パエリアを頼んだような気がする。ワインに含まれるアルコールが唇の傷に染みた。安いワインを飲んでいると、楽しくなってきたのでジメサギを大音量で流したら店員さんに注意された。その店員さんは突然現れたパンダに引きちぎられて、死んだ。店員さんが死んだのを確認して僕たちは、また大音量でジメサギを流し、一緒に歌った。僕と、ダブミヤと、ジメサギと、サイゼリヤのワインを飲みながら僕たちはドロドロに溶けて、死んだ。ジメサギが「なんか隣のやつがチラチラ見てきてムカつく」とブツブツ云って、僕たちを苦笑いさせた。ジメサギはコーラしか飲んでないのにぶっ飛んでいた。ジメサギが今にも暴れ出しそうだったので、僕たちはワインのボトルを半分ほど残して、慌ててサイゼリヤをあとにした。
 
 それから僕は一人で大阪に住む弟の家に帰った。


 弟の家にはなぜか母親もいた。そういえば、今日来るかも、ということを云っていたような気がするが、よく覚えていなかった。

 母親はソファに座った僕に静かに世界の秘密を語りはじめた。

 つづく