いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

夢川ゆい - 夢川ゆい feat. 夢川ゆい, 夢川ゆい & 夢川ゆい

23歳になった。

23歳になったけれど、家族からは愛されて育ったし、自分を嫌う子供じみた幸福時代は終わっていたので、コンビニエンスストアでショートケーキとワインを買って誕生日を祝おうとしたが、蝋燭がなかった。

誕生日ご愁傷さま。

プリパラに行かなくなって、どれくらいの時間が過ぎただろう。

私は、今、夢の、その先にいる。

「えー、えー、あの頃の私、聴こえていますか?夢は、いつか必ず終わるよ」

一人きりの部屋に、私の声だけが虚しく響く。

あれだけ大勢の人を夢中にさせた、私の声も、今は、私を慰めるだけの、ただの道具となってしまった。

夢川ゆい。

今でも、憧れのアイドルとして名前のあがる、伝説の存在。

私の青春。

「あー、あー、幸福な頃の私。終わっていなかった頃の私。今、どこで、何をしていますか?」

答えは知っている。

私はいつだってステージの上にいた。

 

買ってきたものをテーブルの上に並べていると、らぁらからメッセージが来る。読んで、ありがとう、とだけ返す。

あの頃の仲間が軒並みプリパラを辞めていくなか、らぁらだけはまだアイドルを続けていた。

私は、それを純粋にすごいと思う。

今でもらぁらとはたまに会う。らぁらは、私と会うとき、絶対にプリパラの話をしない。何度も繰り返してきた「なんで?」を、らぁらは諦めと一緒に、自分のうちに閉じ込めてしまった。

それが、なんだか、らぁらが誰か別の人になってしまったみたいで、私はらぁらが苦手になる。

蓋を開けると漂ってくるショートケーキの甘ったるい香りが、気持ち悪かった。ワインは不味い。なんでこんなものを買ってしまったんだろう?

全部棄てた。

体が重たい。ので、ベッドに寝転んで、天井を眺める。マイルーム・マイステージ。寝転がったまま、私は歌う。

「あーきらめ、かけていた、ゆめーがか、なう、しゅんかん、」

不思議と、いつも口ずさむ歌は、私の曲でも、マイドリの曲でもなく、みあさんが、一度だけ私たちの前で披露してくれた、あの曲だった。

ディアマイフューチャー。

でも、未来ってなに?

アイドルを辞めたことは後悔はしていない。もう限界だった。誰でもアイドルになれるプリパラという世界。だけど、それは本人の、祈りに近い、意思のようなものがあって、 はじめて、成り立つのだと思う。

終わった物語で祈りは通じない。

私は私が気づかないうちに、ゆっくりと終わっていたのだ。

「夢川、ゆい」

自分の名前を呟いてみても、全然しっくりこない。

それでも、

「まだ見ぬ、未来の、わたしへ。」

「自分らしく、生きていますか?苦労、さえも、喜びに変える、こころがあしたをひらくよ。」

「けして、負けない、きもちがあるなら、願い叶えよう。」

「あれこれ、考えてちゃ、前に進めないから、言葉より、行動で、走り続けよう」

私は私のために私と歌う。私の、私と私と私と私による、私への、これは、

ゆめかわ。