いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

夢川ゆい

??日目

 滅入る。7時ちょうどに目覚ましのアラームに叩き起こされる。歯を磨いたり、味気ないフルグラを無理矢理胃に入れたり、カフェインが混ざってるだけのインスタントコーヒーを飲んだり、社会性を保つために顔を洗って寝癖を直したり、何度繰り返してきたかわからない一連の動作をがむしゃらにこなす。

 がむしゃらに頑張ったおかげで、8時には最寄り駅に着いた。朝の駅前も選挙が終わって少しは静かになるかと思ったが、相変わらず誰かしらが何かを配っていて邪魔で仕方がない。ただ、今日は急いでいないので心のなかで彼らのことも気遣うだけの余裕があった。

 幸いなことに、通勤電車が混み合う前にシートに座ることができた。ラッキーだ。今日はいい調子かもしれない。再読中の麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』の続きを開くが、文字がまったく頭に入ってこない。今日はあんまり調子よくないかもしれない。諦めて最寄り駅まで眠ることにした。

 出社。僕より早く一人すでに自分の席に座っていた。負けた。早く来ることになにか特別な意味があるわけではないけど、なぜか悔しい。仕事の方はまったく捗らず。作業をしながら、自分が今、何をしているのか、何をしたいのかを忘れることが多くなった。気がついたら意味もなく同じタブを開いたり閉じたりしている。そのくせ時間が経つのがやけに早い。気がつけば一日が終わっている。一日の自分の作業量を振り返って愕然とする。これで社会人なのか……。自己嫌悪。そういえば最近、僕に振られるタスクが妙に少ない気がする。午後、顧客が来てうちの上長と何やら話し込んでいた気もする。あぶないかもしれない。

 なんとなく一時間だけ無理矢理残業をして帰る。帰りの電車のなかでブログに載せる記事を書いた。

 駅前で夕飯を買って帰るが、家に帰って布団でダラダラうんこちゃんの切り抜きを見ているうちに寝てしまう。

 滅入る。22時起床。ご飯を食べなくちゃと謎の使命感に駆られるが、そういえば飲み物を買ってなかったことに気づいて自殺したくなった。最近の僕は、顔にニキビができただけでも首を吊りたくなるのだ。

 コンビニに行くための社会性を保つためにシャワーを浴びて酷い状態の顔面や髪の毛をなんとか綺麗にする。なぜかファミリーマートジャスミン茶の他に麻婆豆腐を買う。炊いていた白ごはんに乗っけて食べたが、食事中に謎の腹痛に襲われたせいで味を楽しむこともできなかった。なんとなく食事中にうんこはしたくないからひたすら耐えて、麻婆豆腐の乗った白ごはんを口に運ぶ。出すのを我慢して、胃にそれらを詰め込んでいく。最早なんのために自分が食事をしているのかよくわからなくなりながらなんとか食事を終え、トイレに駆け込む。全部出す。下痢だった。最近お尻を拭きすぎてトイレットペーパーに赤いものがこびりつくようになった。明日はおじやが食べたい。

 つづく

金森まりあ

どうも、先日誕生日を迎えたいとうくんだよ!得意なことは嫌いな食べ物だけを器用に避けて食べること、苦手なことは食事です。先日から食べる物全てに毒を盛られているので、より一層食事が苦手になりました。毒を盛られているので何を食べても吐き気がしますし、勤務中もお腹がキリキリ痛くなります。あと周囲の人たちが僕の悪口を言っているような気がする……。本当に勘弁してもらえませんか?もうやめてください、僕は善良な一般市民なんですけど……!まあ、もちろん全部嘘っぱちですが。普通にストレスが原因だと思います。夜中とか眠れないですし。昨日も夜中眠れなくて久しぶりにいとぶろの過去記事を読み返してみたんですが、これ書いてる人、ずっと同じことしか書いてなくてびっくりしましたね。これじゃ痴呆老人そのものじゃないですか……24歳なのに……。青春真っ只中!……とは流石にもう胸を張って叫べないですが、目を伏せがちにして、いや、まだ、青春?っていうか?まあ、なんか、青春、っぽい?感じ?はあるんじゃないですかね、あると思うんですけどね、どうなんですかね、とボソボソ呟く権利くらいはあるはずなのに……!圧倒的置いてけぼり感……!同い年のあいつも、あいつも、あいつもあいつも、みんな人生楽しそうだってのに……!まあ、とかなんとか、ただ戯けてみせてるだけですが。お道化ですが。恥の多い人生ですが。人生で自慢できることが生涯で唯一無二の作家と飲みに行ったことしかありませんが。わ!皆さんの憐れみの瞳が痛い!いや、でも、え、なんなんですかこの薄っぺらい人生は!?自分でも自分に驚く?っていうか?わりとショックは受けてるんですけどね。これ、伝わってますかね。衝撃!笑劇!小劇!なんですけどね。結構ツライんですけどね。ところで小劇ってなんですか?え?あ、そうですよ。これも道化ですよ。インターネットに数多くいるエセ道化師たちよりは上手く踊れてる気はするんですけどね。ダメですかね。ただだれかに褒めてもらいたいだけなんですけどね。まあ、いいですけど。一人でも行きますけど、僕は。お前らみんなニセモノ!と後ろでずっと指差し続けてるのでたまに振り返ってみてください。

おわり

夢川ゆい / 夢川ゆい - 夢川ゆい(夢川ゆいremix) feat.夢川ゆい,夢川ゆい,&夢川ゆい(prod.夢川ゆい)

24歳になった。

24歳になったけれど、家族からは愛されて育ったし、自分を嫌う子供じみた幸福時代は終わっていたので、コンビニエンスストアでショートケーキとワインを買って誕生日を祝おうとしたが、蝋燭がなかった。

誕生日ご愁傷さま。

今年もチキンを買い忘れた。

 

一日遅れで、にのからラインが来た。

にのはプリパラで出来た友達で、僕がまだ関西にいた頃、たまに朝まで京都で遊んだり、KING OF PRISMの応援上映に行ったりする仲だった。東京に来てからも、一度だけ吉祥寺のあたりで遊んだ覚えがある。

にのは突然いなくなってしまった僕を心配しているようだった。プリパラにいるみんなが、突然いなくなった僕のことを心配していることを伝えられた。

「みんな待ってるっすよ」

その言葉に、僕は、ほんの少しだけ、本当に僅かにだけ、戻ってもいいのかもしれないと思った。ほんのきまぐれに、なんてことなかったように。

ありえないんだけどね。

にのと、昔のように話して、それからみんなに、みんなも元気で、と伝えてもらい、僕は布団に倒れ込んだ。

ここのところずっと眠い。朝起きるのがとにかく億劫で、できることならいつまでも寝ていたい。通勤電車のなかで突発的に発生する座席の取り合いに一日の大半の労力を費やすようになったら人間は終わりだと思っていたけど、人は案外あっさり終わってしまうらしい。

夢川ゆいは考える。みんな大好きだ。この気持ちに嘘偽りはないが、そこに耐えられないものがあるのもまた事実だった。

だめだ、僕以外のすべての人間が幸福に見えてきた。

僕の誕生日なのに。

正確には一日遅れだが。

正確な誕生日に感傷的な気分に浸れないのもまた悲劇だ。

僕の過敏な精神は澱みつづけることにめっぽう弱い。

ずっと、色々な人が僕のもとから去っていくのだと思っていたけど、どうも色々な人に背を向けていたのは僕のほうだったらしい。僕も立派な加害者だったってわけだ。ここらで被害者意識はいい加減捨てなくちゃいけないのかもしれない。もう24歳なわけだし。もう子供がいてもおかしくはない年齢なわけだし。

僕はしっかりしたい。

感傷的な気分に浸るのも、人生に対して曖昧に前向きな気持ちになるのも、何もかも一日遅れだけれど、それでもしっかりはしたいものだと思う。

僕の過敏な精神が、澱みつづけることを嫌い、周りのものを定期的に切り捨てなくちゃ生きていけないってなら、明確な意思でもってそれを実行すべきだし、余計な感傷や罪悪感に苛まれるべきじゃないのだ。

そろそろパンダのアイコンにも限界を感じ始めてきた。

だけど、どうか、願わくば、次にみんなと会うときは、笑顔で。

おわり

近況報告(20190512)

どうも、知っている方はこんにちは、知らない方ははじめまして。いとうくんです。近頃はすっかり細かい文字を読むのが苦痛になってしまい、漫画ばかり読んでいます。最近読んで面白かった漫画は『ゴールデンゴールド』と『クリームソーダシティ』です。特に語りたいような感想はありません。あと他にはゴールデンウィークを何周も繰り返すという、ちょっとベタベタな展開に巻き込まれるなんてこともありましたが、繰り返すのが夏休みではないあたりがあまりにも僕らしいというか、漫画にすれば短編一本にしかならないような残念感が漂っていて、とてもじゃないけど何かが変わるんじゃないかなんて期待は持てない。はいはい平凡。あまりにも日常に変化がないのでタバコを吸い始めてみましたが、得られたのはほんの少しの退廃的な気分(苦笑)だけでした。苦笑いする僕を皆さんは爆笑してください。

と、このように、報告することもないような近況です。よく僕は人から「何もない人間」「普段寝てばかりいる人間」「散歩くらいしか趣味のない人間」と評されがちですが、実際そのとおりなので何も言い返せません。週末何するのって訊かれて一度もうまく応えられた経験がありません。唯一の趣味だった『KING OF PRISM –Shiny Seven Stars-』も終わってしまいましたしね。アニメ放送を楽しんでいる人や、本当に熱意のある人はむしろここからがアツいところなのかもしれないですが、何しろ僕は冷めやすい性格なので、『KING OF PRISM –Shiny Seven Stars-』はすでに【青春メモリー2019年春】に閉まってしまいました。ちなみに、青春メモリーは基本的に自分で掘り返すことはありません。過去にしがみつくという行為は醜悪ですからね。

なんて、こんなセンチメンタルな気持ちになっているのはきっと今日が日曜日だからでしょう。明日からはまた世界vs僕の戦いが始まるはずなので、みなさんどうかご声援よろしくお願いします。(みなさんの声援も僕にとっては憎むべき敵ですが)

おわり

ゴールデンウィーク備忘録⑤完

41日目

 滅入る。結果から言えば僕は失敗した。僕がなにかを語る前に電話は切られてしまった。僕はもういい。好きにしてくれ。すべてどうでもいい。未来は俺等の手の中になかった。ただそこにあると祈りたかっただけだ。本当は何も変わらない。僕には何もできない。

 夜、投げやりな気持ちを抱えたまま大阪行きのバスに乗る。夕飯はつけ麺を食べた。僕の隣は若いお兄さんでいびきもうるさくなかったが、僕の右後ろの大学生のいびきがうるさくて結局一睡もできなかった。ふざけんなよカス。

 

42日目

 滅入る。仮眠をとってから梅田ブルク7へ。久しぶりの梅田ブルク7に感極まる、かと思われたがとくにどうということもない。数多い映画館の一つというだけ。レオくん回で泣いてしまう。

 夜は駅前ビルのなかにある串カツ屋に行った。途中、パイセンと合流。ヒプノシスマイクの悪口で盛り上がる。盛り上がっていたのは僕だけだったかもしれない。いや、やっぱり二人で盛り上がっていたと思う。楽しかった。

 その後、淀屋橋へ。SOJADOJA「DIE」を熱唱しながら川沿いを歩いた。

 

43日目

 滅入る。大阪2日目。午後まで寝て、それからアメ村のほうへ。人が多すぎてただひたすらしんどかった。難波、日本橋のほうまで行きたかったが、しんどすぎて断念。三角公園でたこ焼きくらいは食べたかったがどのたこ焼き屋も行列ができていたためこれも断念。まったくこちらの想定通りに物事が進まなくてビビる。

 ミナミに見切りをつけて、御堂筋線で中津へ。淀川に将来のこと、夢のこと、自分のことなどを話した。淀川は何も云わず、ただ黙って僕の話を聞いてくれた。嬉しかった。心地よくて芝生の上で少し眠る。頭上を飛行機が通り過ぎていった。春の陽気がポカポカ気持ちよかった。

 夕方、中崎町の銭湯へ。露天風呂で父子子がしりとりをしていた。

 夜、同期と呑む。ここ最近の安倍政権について語り合う。僕だけ阿部和重のことだと思っていたのでまったく話が噛み合わず。

 みんなでラウンドワンで馬のゲームをした。僕の馬はあんまり強くなかった。とほほ。

 

44日目

 滅入る。大阪3日目。朝早くに京都へ。中書島で降りる。駅前のカフェーで朝食。僕以外に客がいなくて最高だった。それから川沿いの道を歩いていると月桂冠大倉記念館にたどり着く。せっかくなので入場。展示にはまったく興味がなかったが、お土産に日本酒をもらえたので、さっそく濠川の流れを眺めながら呑んだ。

 ほろ酔いで京阪電車建仁寺へ行くため祇園四条で下車。急に人が多くなる。中書島に帰りたくなる。幸い、建仁寺はそこまで混雑していないかった。庭園を眺めながらボーッとする。間違いなくこの境内では僕が一番禅している……。禅についての知識が『鉄鼠の檻』しかないけど僕が一番だった。僕はすごい。

 その後、バスを駆使し哲学の道へ。到着する頃にはすっかり体力を奪われていて、今すぐにでも帰りたくなったのですぐに帰った。容赦なく照りつける太陽&ごった返す人々&寝不足の身体。無理だ。

 夜、押見修造惡の華』を全巻読破する。これはいとうくんのことを語っている……いや、違うのか……いや、やっぱりこれはいとうくんのことか……?となった。高校生編からいとうくんのことになったと感じた。島田荘司のおかげか……?と最初は思ったが、そうではなく、僕も春日くんと同じように、仲村さんではなく、佐伯さんでもなく、常磐さんを選んだからだ、と思った。

 

45日目

 滅入る。大阪4日目。梅田ブルク7へ。夢と悪夢は表裏一体だ。

 僕たちが愛する限りKING OF PRISMはきらめき続けなくてはいけない。たとえ、その先が地獄だとわかっていても。だから、これは呪いなんだ。僕たちはどちらかが倒れるまで氷上で踊り続けなくてはいけないのだ。僕たちのきらめきがKING OF PRISMをきらめかせ、KING OF PRISMのきらめきが僕たちをきらめかせる。終わることのない循環システム。神に見捨てられた世界で、僕たちは僕たちのためだけに祈る。

 そう。呪いと祈りもまた、表裏一体なのだ。僕たちの進む先は地獄かもしれない。だが、祈り続ける限り、その更に先には新たな楽園が広がっている可能性だって、ある。

 僕は祈る。

 帰りの新幹線で長尾謙一郎『クリームソーダシティ』を読む。いとうくんはまだおかしくないですよね?不安になってくる。

 

46日目

 滅入る。東京にいる。かつて僕が住んでいた街は少しずつだけど変わってきていた。僕はそのことが嬉しかった。

 僕はあらゆる物事に変わり続けていてほしい。僕がかつて住んでいた場所、今住んでいる場所、すべてが完膚なきまでに変わってしまい、僕の居場所はもうどこにもないのだと突きつけてほしい。過去に囚われつづけるのは不健全だ。同じ場所にいつづけるのは不完全だ。あらゆる人の想いが、誰の記憶にとどまることもなく流れ、ひそかに消えていってほしい。記憶も記録もない魂が、それでも何かを期待して、死んでもなお、循環を続ける。変わっていく街並みのなか、どこにもたどり着くことのない魂だけが増えていく。

 僕は終わったもの、過ぎ去ってしまい、もうここにはないものしか愛せない。今、ここにあるものには我慢がならない。

 一瞬たりとも、今、この瞬間が永遠に続けばいいと感じたことなどないし、過去に戻りたいと思ったこともない。

 僕が小学生のとき、世界は苦痛でしかなかった。はやく中学生になりたかった。

 僕が中学生のとき、世界は退屈でしかなかった。はやく高校生になりたかった。

 僕が高校生のとき、世界は普通でしかなかった。はやく大学生になりたかった。

 僕が大学生のとき、世界は永遠でしかなかった。はやく卒業したかったけど、社会人にはなりたくなかった。僕は小説家になりたかった。

 そして僕は今、社会人をやっている。

 本当なら明日で終わるはずのゴールデンウィークはきっと終わらない。

 

47日目

 滅入る。唐突に、なんの脈絡もなくゴールデンウィークが終わった。世界は循環することをやめた。

 結局、僕にできることなど何一つなかった。繰り返されるゴールデンウィークは、僕の知らないところで勝手に展開し、僕の知らないところで勝手に結末したらしい。ヒプノシスマイクは僕の知らないところで勝手に救済され、僕の知らないところで勝手に脱出したのだ。

 もうどうでもよかった。

 勝手にやっていてくれ。

 布団の上で、目を閉じて、また開けて、いつまでも変わらない天井がどこまでも続いていることにうんざりしながら、僕は過ぎ去っていったゴールデンウィークを愛し続ける。

 

おわり

ゴールデンウィーク備忘録④

26日目

 滅入る。本当に滅入る。今日で終わるはずのゴールデンウィークが続いていることに気づく。日付がゴールデンウィーク初日に巻き戻っているのだ。

 そんな、こういう非日常的な展開はうまく避けてきたはずなのに……。ゴールデンウィークが始まって、本当はどれくらいの時間が経ったんだろう。困った。

 チャイムが鳴る。宅配業者だった。『生活考察vol.6』と『コミティア30thクロニクル』の1巻が届く。僕は『生活考察vol.6』は海猫沢めろん先生の文章に、『コミティア30thクロニクル』の1巻はTAGROの漫画に感動することを知っている……。から、読まない。本当は読んだほうがいいのかもしれないけど、僕は怖かった。その本を一度読んだってことをきちんと確認するのが怖い。

 かわりに本屋へ行き、『さよなら恋人、またきて友だち〜宮内ユキについて〜』を買って読む。相変わらずおもしろい。自然に物語の焦点を横滑りさせてく手法もうまい。しかし、オメガバースの世界、奥が深い……。他の作品も読んでみなくちゃ。

 夜ははやめに眠る。とにかく誰とも会いたくはなかった。

 

27日目

 滅入る。ゴールデンウィーク、終わらず。『コミティア30thクロニクル』の2巻と3巻がないことに気づく。もしやと思い、荻窪ゆうパックセンターに行くと荷物として届いたいた。受け取る。読み返すことはしない。今日という日に、繰り返す前の僕はどんな行動をとっていたのかが思い出せなかった。ただとにかく身体を動かしていたくて、井の頭公園まで郵便物を持ったまま歩く。休日の井の頭公園はやはりというか、人で溢れかえっていた。

 夜、誰かと喋っていないと不安になりそうで高円寺へ。誰もゴールデンウィークが繰り返していることに気づいている様子はない。

 

28日目

 滅入る。ゴールデンウィークは続いている。

 布団のなかで頭を抱えていると、サトノクラウンが家にやってくる。心底参った様子の僕に、サトノクラウンは静かに語りかけた。

 サトノクラウンいわく、この繰り返しはヒプノシスマイクによって引き起こされているらしい。原理や動機などは不明。そもそも、ヒプノシスマイクにその自覚があるのかどうかすら不明。

「ただ、俺は馬だからヒプノシスマイクに語りかけることもできなければ、この現象を解決することもできない。それは人間である君がやってくれ、頼む」とサトノクラウンは云った。

 肝心のところを丸投げするな、と怒ってやりたかったが、サトノクラウンは馬だからこれ以上を期待するのは酷というものだ。僕は黙ってうなずいた。

 サトノクラウンが帰ってからも、しばらく僕は布団にくるまって頭を抱えていた。

 

29日目

 滅入る。ゴールデンウィークは当たり前のように続く。

 一晩考えた結果、何より優先すべきはヒプノシスマイクとの対話であるという結論に至った。ヒプノシスマイクと語り合うことで、自覚の有無はともかく、この繰り返しの原因となっている事柄について、しっぽくらいは掴むことができるのではないか、と、そう考えた。が、しかし、問題はどうやってヒプノシスマイクと対話を行うかで、僕はヒプノシスマイクから着信拒否されている上に、ラインもブロックされている。どこに住んでいるのかも知らないし、他に共通の友人がいるわけでもない。連絡の取りようがないのだ。

 仕方ないので、向こうからの連絡を待つことに。ここ数日、ちょくちょく向こうから着信があるにはあるのだ。内容は一言、ごめん、という簡潔なものだが。 

 しかし、いくら待っても着信が来る気配、なし。

 『虚構推理』の漫画①②を読む。僕は原作小説未読勢だが、なんとなく話の筋は知っているつもりなので漫画版がなかなか本題に入らなくてもどかしい。調べたら今10巻まで出ているので、一気に買ってしまうか、それとも原作を読むか……。原作小説は探せば家のどこかにあるはず……。でも、ヒロインの琴子ちゃんがモロタイプなんだよなー。うーん、悩む。

 

30日目 

 滅入る。ゴールデンウィークは続く。

 結局、ヒプノシスマイクから連絡はない。夕方、ハハノシキュウのライブを見に下北沢へ。開場まで時間があったのでヴィレッジヴァンガードで時間を潰していたらハハノシキュウ入店。びっくりして隠れる。チェキを撮るカメラを買っていた。あとでチェキ会のために購入したものだとわかる。ライブは緊張で始終お腹が痛かった。

 

31日目

 滅入る。身体がカサカサに乾いている。もちろん、ゴールデンウィークは終わっていない。

 何度かヒプノシスマイクに電話入れるが、着信拒否。ラインも一向に既読がつかない。

 そもそも僕とヒプノシスマイクの関係がこうなってしまったのは、僕がネットでヒプノシスマイクの悪口を云ったとか、それをヒプノシスマイクが無視したとか、他愛のないことが発端で、まあ数日くらいお互い連絡がつかなくても問題はないかとたかをくくっていたが、まさかこういう形で悪影響を及ぼしすとは……。

 僕だってきちんと謝りたいのは山々なのに、それすら叶わず、一方向こうは気分次第でいつでもごめんと云える状況……。考えているとムシャクシャしてくる。ふざけるな。お前のそういうところが大嫌いなんだよ、僕は。

 夜、高円寺に呑みに行く。駅前でぐでんぐでんになって寝た。朝になってヒプノシスマイクから着信があったことを知る。

 

32日目

 滅入る。路上で寝たせいで完全に風邪を引いてしまった。しばらくゴールデンウィークは終わりそうにないし、静養させてもらうことにする。

 

33日目

 滅入る。少しだけ熱が下がってきた。ファミマでポカリとおかゆを買う以外は外食せず。ひまなので『コミティア30thクロニクル』をパラパラとめくる。いつの間にか寝てる。

 

34日目

 滅入る。熱は下がったが、まだけだるさがある。ヒプノシスマイクからの連絡はない。そういえば、本来ならそろそろ大阪に行っていなくてはいけなかったはずだ。うーん。でもまあ、風邪なら仕方ない。

 午後、身体も軽くなったので中野のほうまで出向く。急に読みたくなってブロードウェイで『ヒカルの碁』全巻購入。家で読む。脇役まで含めてここまでキャラを活かしきる/生かしきる漫画はそうそうないと思う。すごい。何度読んでも感服。

 

35日目

 滅入る。滅入ることにも滅入りはじめる。ヒプノシスマイクから連絡はなし。いろいろ事務的な手続きを済ませるが、これにどれだけの意味があるのか……。キッチンを掃除してみる。

 

36日目

 滅入る。終わらない。『知性は死なない - 平成の鬱をこえて - 』を読む。あれ、僕、この本読んだことあるっけ?

 誰か答えてほしかった。

 

37日目

 滅入る。終わらない。

 買った覚えのない山本直樹『YOUNG&FINE』が家にある。もう、何が本当に起きたことで、何が起きなかったことなのかすらよくわかなくなる。本を開くとたしかに読んだことのある内容だった。

 

38日目

 滅入る。

 嶽本野ばら『遺言 a Will』を読む。これは初めて読む感じがする。そのことが嬉しくて本の内容がよく入ってこなかった。

 

39日目

 滅入る。今日は荻窪ゆうパックセンターに『コミティア30thクロニクル』2巻と3巻を取りに行く日だった気がする。いや、それは昨日か?荻窪ゆうパックセンターに行ってみると、案の定『コミティア30thクロニクル』が届いている。家にあったはずの『コミティア30thクロニクル』2巻と3巻はいつの間にかなくなっていた。頭がいたい。

 

40日目

 滅入る。夕方、下北沢に。開場までまだ時間があったのでヴィレッジヴァンガードに行く。ふと思い立って、チェキを撮るカメラの陳列をいじってみる。一番目の前にあるカメラを一番うしろに。それからハハノシキュウ入店。想定通り、一番前にあるカメラを買っていった。

 その日、サイン会兼撮影会ではカメラのフラッシュが急に点かなくなり、なぜかカメラマンをしていた佐藤先生と一緒に来ていた編集者の人とシキュウさんがあの手この手で明かりを集めるというアクシデントが発生するはずなのだ。そのため、チェキの枚数が足りなくなり、僕はチェキは辞退してアイフォンのカメラで写真を撮ってもらうはずなのだ。

 しかしライブ後、カメラのフラッシュが壊れるようなアクシデントはなく順調に撮影会は行われた。僕も三人でチェキを撮ってもらった。2つのサインが描かれたチェキを手に会場をあとに。僕は思った。案外、未来は俺等の手の中にすでにあるのかもしれない、と。

 そしてその晩、ヒプノシスマイクから電話がかかってくる。

 

つづく

ゴールデンウィーク備忘録③

20日目

 滅入る。目がさめると大阪にいる。身体の節々が痛い。大阪に住んでいる弟の家に駆け込む。足を伸ばして改めて眠った。

 11時頃、梅田ブルク7に。久しぶりの梅田ブルク7は感慨深い、と思ったけど映画館なんてどこも同じような感じでそこまで感情の起伏はなかった。アレク回で泣いてしまう。

 お昼は駅前ビルで家系ラーメン。美味しい。それからMARUZENジュンク堂へ。特に欲しいものはないけど、棚の配置は全く変わっていなくて安心。それから天満の方へ歩く。久しぶりのジグソーハウス。深堀骨『アマチャ・ズルチャ』が1500円で売ってる。悩んだ末、購入。ジグソーハウスは本を入れるボックスを無償で譲ってもらったり、東京に引っ越すとき本をいくつか買い取ってもらったりお世話になったお店なので名残惜しいけど、いつまでもいるわけにもいかないので店を後に。

 夜中の淀屋橋をウロウロ散歩する。ずっと歩いていられる気がした。


21日目

 滅入る。大阪二日目。さて、なにをしようか。とりあえず京阪くずは駅へ。なんもねぇ~。去年の秋に帰ったときはアディダスショップのウィンドウ一面に5lackの写真が貼ってあって結構興奮したけど、もうシーズンも変わって今は別の写真に貼り変わっていた。なんとなく、そのまま京阪で京橋に。大阪城へ行く。柴崎友香の小説を読んで、意味なくこの辺をウロウロ散歩した思い出が蘇る。懐かしい。

 そのまま大川のほうへ。ジュンク堂天満橋店へ。なんだか本屋に行ってばかりだ。ここのジュンク堂は大阪に来てはじめて行ったジュンク堂で、ミステリコーナーの充実ぶりにただただとにかく感動していた覚えがある。当時は東京創元社の棚が二列以上あるだけで感動できたものど。たしか、ここでは古野まほろの単行本を2冊買った覚えがある。

 谷町四丁目まで歩く。そこから地下鉄を乗り継いでなんばへ。ジュンク堂千日前店が残っていないのがさみしい。外国文学の棚に移動するハシゴがあってかっこよかったのにな~。道頓堀、アメ村などをウロウロして、最後は御堂筋を散歩。結局また梅田まで来てしまった。


22日目

 滅入る。大阪三日目。今日は京都に。と、いっても京都は正直あんまり思い出がないんだよね。カラオケで夜を明かしてみんなでカチコチの身体引きずってマクドに行った記憶があるくらいか。思い出してみると結構懐かしいな。あと河原町のあたりはちょこちょこ散歩してたのでぶらぶらするだけでここもそれなりに懐かしい気持ちになれる。あ、そうそう。ジュンク堂京都店は関西に住んでいたときからなんだかアウェイ感があっていつも入店時はドキドキしていたんだ。今回もドキドキしながら入店。店内おぼろげな記憶しかないのでなんともいえない。

 夜になってから鴨川沿いを歩く。残念ながら殺人鬼と遭遇ならず。やっぱり京都の大学生じゃないとダメなのか。


23日目

 滅入る。梅田ブルク7。僕はこの映画について語る言葉を持たない。


24日目

 滅入る。東京のベッドだ。ヒプノシスマイクから着信が何十件も入っていた。かけ直してみると通話中。まあ用事があるならまたかけてくるかと思い放置。

 なんとなく、コインランドリーって使ったことないなと思い、近所のお洒落なコインランドリーに旅で出た洗濯物を持って行ってみる。うわ、高い!でも洗濯物を乾燥機にかけてくれるのは便利……と思ったらお気に入りのTシャツ少し縮んでないか?もう二度と利用しない。

 ゴールデンウィークで夜更かしできる最後の日なので、夜は高円寺へ。いつものお店でお酒を呑んで帰る。年々お酒弱くなってるから、今日は飲み過ぎないようにセーブできた。


25日目

 滅入る。本当に滅入る。今日で長かったゴールデンウィークも終わりか……。最終日は細々とした現実世界の手続きを片付けるだけで終わりそう……。あー、仕事したくないなぁ……