いとぶろ

いとうくんの楽しい毎日

太陽は傾きづつける

今日はたくさん歩きました。ただ意味も目的もなくひたすらひたむきに歩くことを、僕達は散歩と呼びます。

さんぽ。散歩、の素晴らしいところは、それをしたところで、何か重要な発見があるとか、貴重な体験をするとか、人間的に成長するとか、そういうことがないところです。いち、で始まれば、いち、で終わる。一歩も進まないし、退くこともない。完全停止。無風状態。流れ行く時間に一人取り残される。太陽は傾きづつける。僕達は陽の光があたるところから、少しだけ外れる。

一息つく。

さて、何をしよう。なんでもできる。何をしても、それは散歩になる。今なら。今だけ。ただぼんやり歩いてみてもいい。何か考えごとをしながら歩いてもいい。不安になったら、走り出してもいい。少し疲れたら、木陰で休んでもいい。無理に歩き続けてもいい。ちょっと歩いて、飽きたら、そこでもう「やーめた」って言って辞めてしまってもいい。言わなくてもいい。服装もなんだっていい。少し暑ければ上着を脱げばいい。ちょっと寒ければ、マフラーを巻こう。サンダルでペタペタ歩いてもいいし、動きやすいスニーカーでステップを踏みながら歩いてもいい。革靴やハイヒールなんかはおすすめしない。でも、どうしてもというなら、それでもいい。もちろん、裸足でもいい。歩ければなんだっていい。車椅子でもいい。自転車でもいい。向こうから知ってる人が歩いてきたら、声をかけてみてもいいし、知らないふりをしてもいい。向こうから知らない人が歩いてきたら、勇気を出して声をかけてみてもいいし、俯いて知らないふりをしてもいい。よくわからない動物や花を写真におさめてもいいし、視界におさめなくてもいい。お腹が空いたら適当な喫茶店に入ってもいいし、コンビニで簡単に済ませてもいい。人の視線が気にならないのなら、歌いだしてもいいし、ずっと口を固く閉ざしていてもいい。少し歩いてみて、なんだか楽しい気持ちになってもいいし、いい加減うんざりしてきてもいい。何も感じなくてもいい。太陽は傾きづつける。どれだけ歩いたっけ?どうでもいい。帰り道どっちだっけ?適当でいい。何かやらなくちゃいけないことがあったはず。忘れちゃっていい。タクシーや電車やバスを使ってズルしてもいい。そのまま家に帰ってもいいし、帰らなくてもいい。太陽は今どこだろう?どこだっていい。いつ寝たっていいし、いつ起きたっていい。明日も散歩してもいいし、しなくてもいい。僕はしない。

おわり。